私が中古マンションを購入して入居してから3ヶ月ほど経った頃、お風呂場から何とも言えないドブのような、それでいてカビ臭いような異臭が漂い始めました。毎日欠かさず排水口のゴミを取り、床や壁も洗剤で磨き上げているのに、翌朝になると浴室の扉を開けた瞬間に鼻を突く嫌な匂いがこもっているのです。最初は排水管のトラブルかと思い、強力な塩素系のクリーナーを何度も流し込みましたが、一時的に良くなるだけで根本的な解決には至りませんでした。そんなある日、ネットで調べているとエプロンという言葉に出会いました。浴槽の側面に付いているカバーのような板のことで、これが外れるという事実をその時初めて知ったのです。恐る恐る浴槽の下側に指をかけ、上に持ち上げるようにして手前に引くと、ガコッという鈍い音とともにエプロンが外れました。その瞬間に溢れ出してきたのは、これまで嗅いだこともないような強烈な悪臭でした。エプロンを完全に取り外して内部を覗き込むと、そこには地獄のような光景が広がっていました。浴槽と壁の隙間から流れ込んだ髪の毛や石鹸カスが、湿った床面で真っ黒なヘドロ状になり、さらにそこから無数の黒カビが発生して、浴槽の裏側一面を覆い尽くしていたのです。マンションのユニットバスは密閉性が高い分、一度入り込んだ湿気や汚れが逃げ場を失い、こうした隠れた場所で腐敗が進んでしまうのだと痛感しました。私は覚悟を決め、防護マスクとゴム手袋を着用し、浴室用の強力なカビ取り剤を数本用意して大掃除を開始しました。まずはシャワーの温水で表面のヘドロを洗い流しましたが、それだけでも排水口が詰まりそうになるほどの汚れが出てきました。次にカビ取り剤を内部の隅々まで噴射し、成分が浸透するまで30分ほど放置しました。洗い流すと、元の白いFRPの質感がようやく見えてきましたが、1回では取り切れない頑固な汚れもあったため、柄の長いブラシを使って浴槽の裏側まで何度も擦り洗いを繰り返しました。作業を始めてから3時間が経過した頃、ようやく視覚的な汚れが消え、それと同時にあの不快な臭いも劇的に軽減されていることに気づきました。仕上げに防カビ剤入りの燻煙剤を焚き、エプロンを元に戻しましたが、翌朝の浴室は嘘のように無臭で清々しい空間に変わっていました。この経験から学んだのは、マンションのお風呂掃除には目に見える範囲を掃除するだけでは不十分な領域があるということです。特にエプロン内部は年に1回から2回は開けて確認しないと、気づかないうちに悪臭の温床になってしまいます。もし皆さんも、掃除をしても消えないお風呂の臭いに悩んでいるなら、一度勇気を出して浴槽のカバーを外してみることを強くお勧めします。そこには、日常の掃除では決して届かない異臭の正体が隠れているかもしれません。