トイレが詰まりかけたあのアパートでの一夜
それは残業で疲れ果てて帰宅した、平日の夜のことでした。いつものようにアパートのトイレに入り、用を足して水を流した瞬間、違和感を覚えました。水が、流れない。いや、正確には、渦を巻くものの勢いがなく、便器の水位がゆっくりと、本当にゆっくりと下がっていくのです。まるで時間が止められたかのようなその光景に、私の心臓は嫌な音を立てました。完全に詰まってはいないけれど、これは明らかに異常事態です。もう一度流したら溢れるかもしれない。その恐怖で、私はその場に立ち尽くしてしまいました。アパート暮らしで最も恐れていたトラブルの一つ、水回り、それもトイレの詰まりです。頭の中では、床が水浸しになる光景や、階下の人に謝罪する自分の姿がぐるぐると回り始めました。とりあえず、ネットで対処法を調べましたが、ラバーカップを使う方法や薬剤を使う方法など、どれも自分でやるには不安が伴います。もし失敗して状況を悪化させたらどうしよう。特に、アパートという共同生活の場では、自分の失敗が他人に迷惑をかけることへの恐怖が先に立ちます。さんざん悩んだ挙句、私は深夜にもかかわらず、アパートの緊急連絡先に指定されていた管理会社の番号に電話をかけました。事情を話すと、幸いにも担当者は冷静に対応してくれ、翌朝一番で業者を手配してくれるとのこと。その夜はトイレを使えない不便さよりも、一人で抱え込まずに済んだという安堵感の方が勝っていました。翌日、業者の人が調べた結果、原因は私の部屋の排水管の軽度の詰まりで、すぐに解消しました。あの時、勇気を出して管理会社に電話して本当に良かった。アパート暮らしのトラブルは、一人で悩まず、まず専門家と管理者に相談することの大切さを痛感した一夜でした。